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後期油彩画 (1)神話的主題、退廃とエロス
山本が1970年代後半に銅版画で追及した美的で退廃的なテーマは、80年代に入ると、そのまま油彩画の領域にまで拡げられることになる。山本が油彩画に精力的に取り込むのは、1960年代前半以来二度日のことである。その契機となったのは、1975年のヨーロッパ旅行であった。この年に彼は、銅版画およびデッサンの個展をパリで開くために初めて渡欧する。その時にその時に訪れたフランス、ベルギー、イタリアの美術館で過去の巨匠の作品、とりわけモロー、クノップフ、ベックリンといった象徴主義の画家たちに感銘を受けるとともに、それらへの挑戦心を掻き立てられたようである。
こうして、70年代後半の小品を経て、80年頃から油彩画の大作に久々に挑戦した結果、ギリシャ神話に取材した《砂の上のヘルマフロディトゥス》、《スフィンクス》、《竪琴―オルフェウスに捧げるレクイエム》、《イカロスの夢》、かつて銅版画で描いた主題・構図をそのまま油彩画に拡大した《女友達Ⅰ》、《無軌道な娘達》、《天使・メランコリアⅠ》などが生み出された。
これらの油彩画は、他人に譲られることもなく、まるで完成を拒むかのようにアトリエでゆっくりと描き続けられた。こうした山本の制作態度は、唯美主義の体現者として彼が日本の美術界において稀有な存在であったことを示している。
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