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初期油 彩画ー1957~1965年頃
美術に目覚めたばかりの十代半ばから二十代前半にかけての作品。この時期の山本は、自らの画風の確立を模索しつつ、幅広い主題と様式に挑戦した。
例えば、赤いセーター姿の自画像や洗濯する女性を描いた《一日が始まる》はモディリアーニやキスリングらエコール・ド・パリの影響を感じさせ、第8回コーベ・アンデパンダン展で3席に選ばれた《壊れた舟》は、海辺の人物や烏、壊れた船といったモチーフの組み合わせがシュルレアリスム的な幻想を想起させるとともに、荒々しいタッチによる表現主義への志向が窺える。これらの作品はいずれも巧みな描写力と鋭敏な感受性に裏打ちされ、画家としての早熟さを物語っている。
さらにこの時期には、アンフォルメル的な抽象絵画にも取り組んだ。画鋲やゼムクリップを貼り付けた《沙上D》などは、当時の関西前衛を牽引していた「具体美術協会」の動向を反映している。1962年および1963年の行動美術展(東京都美術館)に多数のアンフォルメル作品を出品したが、山本が既存の団体展に参加したのはこの時期に限られ、時代の趨勢であったアンフォルメルからは早々に距離を置いた。
不定形の形態の中に眼球や骨など人体の断片を思わせるイメージを浮かび上がらせた半抽象作品は、後の銅版画表現を先取りするものとして注目される。短い期間ながら多様な様式を果敢に試みた 初期油彩画は、後年の制作を準備する萌芽に満ちており、若き芸術家が自らの表現を切り拓いていく過程を鮮やかに示している。
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